アプリに至る代表清水の原体験
当アプリは、代表清水の体験と発見をベースに設計されており、心理学的な裏付けに支えられております。
心理学的な説明の前に、清水の体験についてお話させてください。本アプリの原点は大きく3つの転換点からなります。(下記体験については、清水が記述しております)
第一章
創業の契機 恩人の死
いまから10年ほど前、私は追い詰められておりました。母子家庭ということもあり、美大の学費を工面できなかったのです。私はせどりといったプチ事業にも挑戦し、学費100万程度を集めることができました。しかし喜びも束の間、あるアクシデントにより、稼いだお金を全て持ち逃げされてしまいました。途方に暮れ、彷徨って流れ着いたのが新宿の繁華街でした。 路上で泣いていた私は、恩人と呼ぶ人に出逢います。恩人の伝手で、歌舞伎町の繁華街で学費を稼ぐこととなりました。この助けにより、学費を稼ぎ、なんとか退学を免れました。 以降、大学と新宿との二重生活がはじまることとなります。というのも、ちょうど退学を回避できた頃、店長が急遽飛び、代理店長として抜擢されました。なんとか店員さんに出勤してもらおうと、新宿の街の人たちと向き合う日々でした。鬱で起床できず出勤できない、リストカットがやめられない、望まぬ妊娠をしてしまったが病院へ行く勇気が出ない、生活費が足りずにレジ金を盗んでしまう…。ここで私は、おのずと社会課題と直面したのです。この街には想像を絶する環境で生まれ育った人たちが大勢いる。心の痛みは相対的なものではない。そう感じた私は、その時できる精一杯のこと(=みんなの話を聞きにいく)に身を投じました。 昼夜を問わず活動に躍起になっているものの、努力も虚しく、周囲の状況は一向によくなりません。忘れられない数々の出来事が起こります。例えばかつて殴られた人は、その痛みを他の誰かにぶつけてしまう。痛みの連鎖はそう簡単に止められなかったのです。 そうした焦りのなかで、さらに決定的な出来事が起きました。恩人が自ら命をたったのです。 彼は天涯孤独で施設育ち、親の顔は覚えていないと言っていました。中学校にも通わず、街の中で育ちました。頼る人もいないなか非行に走るものの、持ち前の頭の良さと人望でなんとか生き抜いてきた人です。私が学費を稼ぐことができたのも、十中八九彼のお陰でした。生前彼の鞄からたまたま求人誌を見つけてしまったことがあります。ページをめくれば、すべてのページはバツだらけ。彼は、「いまの人生に満足している」と言葉では話しながらも、本当は違う世界への転職活動に励んでいたのです。夢はかなわないまま、彼の人生は終わりました。 私は世界を許せませんでした。生まれや性別によって、こんなにも機会に差の出る世界が許せませんでした。これは彼だけの責任なのか。願いが叶わないのも、誰かを傷つけてしまうのも、努力が足りないからなのか。そんな訳はあるはずがありません。しかし同時におなじくらい、何もできなかった自分を責めました。「どうして話をきくことはできなかったのか」と。 こうした失意のなか、人生をかえるものに出会いました。インターネットでした。twitterを通じてIT学生起業家たちと出会ったのです。私は、これだ、と思いました。「私ひとりでは限界があることも、オンラインで誰かと誰かが励ましあえる」。そうPCを買ってプログラミングをはじめました。 IT を駆使して、生まれによる障壁を越える。そうした思いが起業へと私を駆り立てました。
第二章
理不尽と挫折 うつ病へ
無事起業し、これですべてがうまくいく。しかし、そうは問屋が卸しませんでした。
当然のことながら、サービス作成は簡単にはうまくいきません。何より一番大変だったのは、当時女性のIT企業家で資金調達している人はほぼいなかったことです。更に当時の IT 業界では、社会課題の解決に向き合うという姿勢への理解も皆無でした。 起業してある程度月日が経った頃、ようやく信用できる人たちと出会えたかと思いました。しかしそれも束の間、結局は「投資をするから〜」と、不当な力関係を使って常軌を逸した要求を迫れる始末でした。 誰も味方はしてくれませんでした。生まれや性別によって、可能性はとざされていまうのか、と失望しました。いよいよ起き上がれなくなりなりました。こうして私はうつになりました。
第三章
回復過程と気づき
「相談できない」「押し殺す」という共通課題
自分に何が起こっているのかわからなかりませんでした。トイレ、歯磨き、お風呂、食事、生活のすべてができなくてただただ床の上で過ごしました。もう何もできないい状態だからこそ、周囲を人をたよらざるをえませんでした。
ここで私は人生ではじめて、自身のどうしようもない弱音や文句を言葉にし、聞いてもらいました。涙がたくさん出て、はじめて許された気持ちになりました。ここで自覚したのです。私は気持ちを話すことに意味がないと思って外に出すことをしてきませんでした。こうした鬱屈とした感情を、自分のなかでも押し殺してきていたのです。
これはかつての恩人も同じのでしょう。感情を閉じ込めてきていたのです。
「よしよし」への到達
時間と共に、少しずつ回復してきました。そこで友人から、回復に向けた取り組みをいくつか紹介してもらいました。
心療内科、精神療法、自助会等です。 なかんづく衝撃的だったのが自助会の取りくみでした。 同じ課題感をもった何人かが集い、自分の気持ちを語り合う。匿名の集まりだからこそ、社会的な利害を気にせず吐露できる。その語りに批判は入らない。あるのは肯定的なリアクションのみだ。 私はこれだ!と思いました。 吐き出すことと受け止めてもらうこと。その繰り返し。友人たちがやってくれていたことも近いのかもしれない。これが回復の礎になると。 なにしろ、本当に具合が悪いときは、病院を選ぶことなんて愚か、予約なんてとてもできません。息をすることしかできず、それさえ苦しいのです。 そんな時、誰でも、どこからでも、24時間いつでも、気持ちを吐露して受け止められる場所があれば…! こうした体験が、「よしよし」のSNSサービス、「いつでもおかえり」へと至っております。
事業概要
弊社の事業「いつでもおかえり」(以下いつおか、と表記)はうつ病や孤独・孤立への予防的介入を目的に作られた、基本無料のSNSアプリケーションです。
いつおかでは、ユーザーが「よしよし」(=共感に基づく、温かい働きかけ。スタンプを押す等)されることにより、悩みへの心理的な負荷を和らげつつ、誰にも相談できなかった状態から専門的な支援へとつながるきっかけを提供します。
アプリの体験の流れ
当アプリの基本構造は「よしよしでつながる / よしよしが循環する」仕組みから成ります。
一連の仕組みが、相談できなさを克服して、うつ病発症や孤独・孤立の予防を実現します。
1. よしよしでつながる
アプリの交流は豊富なリアクションスタンプを押すこと=「よしよしする」ことによって始まります。
1 悩みを抱えたユーザーがアプリに登録し、何かしらの投稿をします。
2 この新規投稿に関心をもった既存ユーザーは、「よしよし」すなわち共感的な形で反応します。
3 自分の投稿を受け止められて嬉しくなったユーザーは相手にも受容スタンプを押し返したり、他ユーザーとコメントでやり取りします。すなわち相互的な交流が発生します。
4 温かな交流を通して、自分を受け止めてもらえるという安心感が積み重なり、徐々に自己開示への抵抗感が下がります。
こうして、悩みや相談を他者へ打ち明けることが難しかった人が、日常的に使用するSNSアプリ上で自分自身の悩みを吐き出すことができるようになります。(注1)
2. よしよしが循環する
上記の流れで、よしよしされたユーザーは、自分が「される」だけではなく、自発的に他のユーザーをよしよしします。その相手には、次の新規ユーザーも含まれます。
すなわち「よしよし」するユーザーが増えるため、次に「よしよし」されるされうるユーザーの数が拡大していきます。
このように「よしよし」の循環を通じて、より多くの人が「よしよし」され、受容するようになります。
今後の展開
「悩み」の交通整理役になる
~ 専門的支援のマッチングも交えて ~
本当に支援を必要としている人にこそ支援が届かない。 辛いけれど差しのべられた手を掴むことができない。このような逆説的な課題が蔓延しています。
当課題に対し、気軽に自己吐露できるSNS、いつおかが解決の一助となります。
専門的支援とのマッチング
いつおかは自分自身の素直な気持ちや想いを吐き出し、それを「よしよし」されるのに最適な場所です。
いつおかでは、多くの人が自然と吐き出した「悩み」が蓄積されていきます。
蓄積された悩みのデータからは「いつ」「どのような人に」「どのような支援が必要か」といった傾向を解明できます。
導かれた傾向から、相談窓口や支援の専門家へマッチングさせる機能を実装できます。結果として支援を真に必要とする人へ適切に届けられるようになります。
正しい情報や知識を届ける
支援のマッチチングのみならず、正しい情報や知識を多くの人へ届けることが必要と考えています。
真偽の不確かな情報が溢れる現代では、情報の正しさよりもむしろ「バズり」に代表される話題性やインパクトが重視される傾向にあります。
悩みと経験に基づいたよりリアルな情報が集結するいつおかだからこそ、正しい知識や情報を発信・共有する場であるべきだと考えます。
具体的には、アプリ内の質問機能やいつおかラジオの配信などを通して、悩みを抱える人が自分の状態を客観的に把握でき、適切な対処方法や相談先について知ることをサポートします。
上記を通じ、いつでも、誰でも、簡単に、自分に最適な医療や社会資源へリーチできる世界を実現していきます。
背景にある課題「相談できなさ」
私たちが取り組む社会課題は、うつ病と孤独・孤立による個人のwell-beingの低下と経済損失です。そしてその根本にある「相談できなさ」です。
精神疾患及び孤独・孤立予防の必要性
うつ病は日本において6人に1人が罹患するとされ、自殺リスクも高く、個人の人生の質を大きく損ねる疾患です。WHOは、うつ病を2030年までに世界で最も疾病負荷の高い疾患の一つになると予測しています。また、日本でのうつ病による経済損失は単年で2.6兆円に上ると厚生労働省は試算しています。うつ病は適切な治療により改善が見込めるものの、診断や治療開始までに時間を要しがちです。予防や早期介入の取り組みが急務となっています。
もう一つの深刻な問題が社会的孤独・孤立です。 孤独感は心身の健康に多大な悪影響を及ぼし、うつ病やアルツハイマー病だけでなく、心血管系疾患やがんの予後等にも関係することが知られてます。イギリスの推計では孤独・孤立による経済損失が4.7兆円に達し、GDPが同国を上回る日本でも無視できません。現に日本人の4.5%が常に孤独感を感じていると報告されており、特に社会的に排除されやすい人々にとって、安心できる居場所の確保は喫緊の課題です。
課題の根底にある「相談できなさ」
これらの問題の根底には、日本人特有の「相談できなさ」があると私たちは考えます。内閣府の調査においても、6割の人が悩みを相談できなかった経験を有すると報告されています。
こうした「相談できなさ」は、メンタルヘルスサービスや支援の窓口が用意されていても必要な人には届かない、という課題の深刻な要因だと考えられます。悩みを相談する前の第一歩である「相談すること」への心理的ハードルを下げ、支援団体との距離を縮めるような取り組みが必要不可欠です。
いつおかは、「相談できなさ」を抱えるあらゆる人に向けて扉を開いています。
年齢・性別・抱える疾患などの違いで区別することはありません。住む場所・人間関係・金銭面の課題など、様々な事情により周囲のサポートや相談先につながることが難しい方にこそ、いつおかが寄与できると考えております。
事業説明動画
市場や戦略の話もすべて詰め込みましたので、是非ご覧いただければと思います。こちらの動画をご覧になって少しでもご興味をもっていただいた方は、是非ブレストやディスカッションさせてください。